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徳島県が進める産業集積に向けた取り組み「徳島バッテリーバレイ構想」について

こんにちは、四国の転職エージェント、リージェントの徳永です。
今回は、徳島県が地域産業の振興を目的として開始した新たな取り組みについてご紹介します。

日本全体で見ると、自動車産業が主要産業とされていますが、各都道府県、さらには市区町村単位にまで視点を落とすと、地域ごとの主要産業には大きな違いが見られます。

四国地域においては、愛媛県今治市の造船業、愛媛県四国中央市の製紙業、徳島県鳴門市の製薬業などが代表的な産業としてあげられます。これらは、明治以降の歴史の中で育まれてきた伝統的産業であり、地域社会に雇用や活力をもたらし、地域にとって欠かすことのできない存在となっています。

また、従来には見られなかった新たな産業の創出と定着を図る動きも見られます。四国においては、その代表例として「徳島LEDバレイ構想」などが広く知られています。

徳島LEDバレイ構想

徳島県が2005年に策定した「徳島LEDバレイ構想」は、LED関連産業の集積と発展を推進する取り組みです。徳島県には、高輝度青色LEDの製品化に成功した日亜化学工業(株)が本社を構えており、同社の技術革新を基盤として、県内にLED産業を新たな基幹産業として定着させることを目指しました。

この構想のもと、技術支援や先端研究への支援、技術交流セミナーの開催、新規ブランドの確立、公共施設へのLED製品の積極導入など、多角的な施策を展開。

その結果、構想が開始された2005年当初には約10社にとどまっていたLED関連企業が、10年後の2015年には132社にまで増加し、LED関連製品の出荷金額が全国シェアの約6割を占めるまでに成長しました。

そして現在、LED産業の集積で一定の成果を上げた徳島県は、次なる産業の柱として新たな産業集積を目指す「徳島バッテリーバレイ構想」に取り組んでいます。

徳島バッテリーバレイ構想

2024年、徳島県は新たに「リチウムイオンバッテリー」に関する産業の収益と発展を推進するべく、「徳島バッテリーバレイ構想」を策定しました。

スマートフォンや家電製品、自動車など幅広い分野で使用されるリチウムイオンバッテリーは、半導体と並び、経済安全保障の観点から国産化の重要性が高まっており、政府もその推進を強力に後押ししています。

中でも徳島県は2022年時点の「都道府県別 蓄電池製造業製品出荷額」において、全国4位の1,603億円(シェア13.5%)と、高い供給力を誇っています。全国1位の静岡県の出荷額は1,973億円と、その差は決して大きくなく、徳島県は今後の発展次第で全国1位を目指せるポジションにいます。

このようなポテンシャルを最大限に引き出し、LED産業に続く次なる基幹産業として県内に定着させることを目指し、徳島県では以下のようなテーマに基づいた取り組みを始めています。

<研究・製品開発支援>
徳島県では、蓄電池そのものの生産にとどまらず、幅広い関連産業の創出を目的として、材料開発や工場の生産設備、充放電検査装置などに関する関連製品の研究開発を支援しています。

<人材育成・確保>
関西地域と連携し、企業が求める技術者を供給できるカリキュラムの開発や、社会人に向けたリカレント教育プログラムの構築を目指しています。

特に学生向けのプログラムでは、徳島大学や阿南高専、県内6つの高校、そして小学校などに対して特別授業や工場見学を実施し、延べ700人の学生が参加しました。2025年度以降はさらにその実施校を増やし、インターンシップや見学・交流会などを行い、若いうちから「バッテリー産業」に親しみを持ってもらうことで、将来的な担い手を増やす計画を推進しています。

<新事業展開・誘致促進>
既存の徳島県内企業に新規事業として蓄電池産業への進出を促すことはもちろん、産業団地の形成などを通じて企業誘致促進を図っています。計画初年度となる2024年度には3回のセミナーが企画され、県内企業向けの企画には延べ200名以上、県外からの企業誘致向け企画には20社以上の参加がありました。

参加した県内企業の約半数が、蓄電池産業には未参入であり、今回のバッテリーバレイ構想を機に新規事業に取り組もうとしています。また、企業誘致セミナーに参加した企業のうち、3割以上が工場等の新設・増設を検討しており、県内外の企業が徳島県内で蓄電池産業に取り組む姿勢を強めていることがうかがえます。

これらの取り組みを通じて、徳島県は2030年までに蓄電池産業における製造品出荷額を現状の1.9倍にあたる3,000億円、従事者数を現状の1.2倍にあたる5,000人まで増加させることを目指しています。



単なる産業育成の枠にとどまらず、地域の未来を見据えた包括的な戦略である「バッテリーバレイ構想」の真価が問われるのは、今後5年後、10年後になるでしょうが、LEDバレイ構想と同様に大きな成果へと繋がることが期待されます。

この徳島県の挑戦が人口減少や産業空洞化といった課題に直面する全国の地方自治体にとっても、持続可能な成長のモデルケースとなることを心から願っています。


筆者プロフィール

国家資格キャリアコンサルタント

德永 文平Tokunaga Bunpei

香川県高松市出身。大学卒業後、関西の大手鉄道会社に就職。経理部門に配属されたのちに、新規事業セクションに異動となり、自治体と連携したまちづくり事業や、スマート農業事業に従事。幅広い業務の中で、採用担当やチームメンバーの1on1面談を通じて「採用が組織を変えた瞬間」の面白さにはまっていく。「四国ならではの働く価値を創造する」というリージェントのメッセージに、自身も抱えていた悩みの答えを見出し、転職を決意。2024年、株式会社リージェントに入社。現在は自分と同じようにUIターンを検討している方の背中を押すべく、転職コンサルティングに従事している。