子連れ移住で気を付けたい「子どもの不安や心境変化」への寄り添い方
UIターンに特化した転職エージェントとして「転居を伴う転職」を多く支援させていただいていますが、「子どもが小学校に入学するまでにUIターンしたい」「2年後の就学のタイミングに向けて企業や求人の情報を集めておきたい」と、子どものライフイベントに合わせてUIターン転職を希望される方が割合多くいらっしゃる印象があります。急な転勤ではなく、ある程度の準備時間が持てるであろう「移住」でも、大人側には子を想うゆえの不安があり、子ども自身にも様々な不安があるでしょう。
UIターン転職による環境変化の前後では、戸惑い、緊張、孤独、期待、喜び、、、といった複雑な感情が生じますので、不安が募ることも多々あります。ただ、「こうした複雑な感情が生まれるのは自然なことだ」という安心感が持てたら、UIターンの体験が親にとっても子どもにとっても、自信に繋がる人生体験になるように思います。
私自身、夫の転勤により子どもを連れて四国から首都圏に移住した経験があります。四国へのUIターンとは逆のパターンにはなりますが、今回は、そうした私の移住体験をベースに、転勤族のママからかけてもらった救いの言葉を交え、親の不安や子どもの不安への寄り添い方についてご紹介したいと思います。先回りして安全な道を用意して欲しいということではなく、ある程度のイメージを持っておいていただくことで、皆さんの心のゆとりに繋がれば幸いです。
先行しがちな親の不安
「環境の違う土地で、友達ができるだろうか?」
こんな不安を持つ親御さんは多いと思います。早く気の合う友達ができて欲しい、楽しく過ごしてほしい、といった想いから、こうした不安が生まれるものと思います。マスクで表情が読み取りづらく、リアル行事も制限されているコロナ禍は、お友達との距離を縮めるチャンスが少なそう。。。時間がかかるのでは。。。心配ですよね。
ただ、こうした不安を抱えた時は「親の不安は子どもに伝染することがある」ということに気を付けておいていただきたいと思います。子どもは特に不安に思っていなかったことも、親の不安が伝わり、緊張し、実際に友達ができるだろうか、という子ども自身の不安になってしまうことがあります。
なので、まずは自分自身の気持ちを整え、子どもの不安に寄り添う余裕を持つことが大切です。子どもも心配なのですが、転居を前にした親御さんは、転校や転園の手続き、保育園探し、病院探し、行政手続き諸々、挨拶周りやお礼、仕事の引き継ぎや準備など、すべきことが盛りだくさん。今出来ること、調べておくこと、自分を整理する意味でも書き出して、何が不安か、何が知りたいかを言語化するだけでも気持ちが整理されます。
TODOと不安をそれぞれがリストアップできたら、調べもの、計画や段取りも進み、これが心のゆとりに繋がるんじゃないかと感じています。私自身のケースでは、転居先社宅が確定したのが赴任1週間前(笑)。引越しの見積、転校手続き、保育園探しのどれもうまく進められず悶々としましたが、居住地が決まれば即動けるようにと始めていた事前のリストアップのお陰で、いくらか心の穏やかさを保てていたように思います。
「漠然とした不安」は立ち向かうのが困難に思えますが、「具体的な不安」は解決案がきっと見つかります。まずは目の前のことをしっかり整理して、子どもの気持ちに寄り添えるよう準備をしてみてください。
どうして引っ越すの?なんで今なの?
辞令で仕方のない転勤であっても、長年計画してきた希望通りの移住でも、子どもも「転居の理由」と「そのタイミングである理由」を知りたいですよね。「なぜそういう決断をしたのか」を年齢に応じた言葉で伝えることは、新しい生活への期待や転居先へのプラスのイメージに必要だと感じます。
私は首都圏への引っ越しを目前にして、ご近所さんに「コロナ禍の今、わざわざ都会に行かんでも…」と心配いただいたのですが、直後に帰宅して子どもがそっと「〇〇〇のために引越すんよね」と話しかけてきたのが今も印象に残っています。どんな理由であれ、親の決断の背景をしっかり伝えることは、きっと人生の学びになり、人として尊重された実感に繋がるように思います。
別れの寂しさをしっかり受け止めてあげる
慣れ親しんだ暮らしとの別れは子どもにとってとても辛いことです。お友達や先生、ご近所さんや家族ぐるみで親しい人などはもちろん、住んでいる家、散歩道や通学路、お気に入りの場所、習い事やクラブも別れの対象になります。今生の別れではないにしても、寂しい気持ちで涙することもあると思います。とても自然な感情なので「寂しくなるね、大好きやもんね」と気持ちを受け止めると子どもはほっとするようです。
転校の実体験がない私にアドバイスできることはないと開き直り、転出する友を送り出した側の気持ち、転入生や転入先生との出会いで新たな価値観と出会えた体験を伝えると、食い入るように質問してきました。そうした会話でも、少しずつ子どもの不安は払拭されるのかもしれません。
小学中学年で急遽転校することになった息子。旅行との違いが判ってなさそうな幼児の娘。2人への関わりの工夫として、普段よりもさらにそれぞれの子どもと「1on1で過ごす時間を設けること」を意識して、複雑な感情を受け止めるよう心がけていました。これも転勤族のママから教わった心がけです。意識していないときっと盛りだくさんのTODOに忙殺されていただろうなと思います。
転居の数日前に親しい友達から「離れていても友達だよ」と一言、想いの詰まったカードをもらい親子で涙しました。オンラインやSNSですぐ顔が見れる世の中ですが、人との別れも人生経験。辛い気持ちや寂しさを感じることも、人を成長させるなと感じています。離れてしまった友達と、転校したから出会えた友達。ダブルの友達がいるって幸せだねと、笑える日がきっと来ると思っています。
荷詰めの作業が、子どもの気持ちの整理に繋がる
小さなお子さんが一緒だと、引っ越しの手続きや荷造りも苦労が多いと思いますが、引っ越し作業を通じて心の整理が整う面もあるように感じました。
主な荷造りは子どもたちが寝ている間に頑張りましたが、子どもたちにも自分の荷詰めをお願いしました。小学生の息子に遊び道具は段ボール〇箱以内にと荷物選別をお願いしたところ、これまでの思い出を振り返りつつ、しっかりと荷物を整理してくれました。
3歳の娘が泣き顔で「自分の段ボール箱がない」と訴えたので、かなり小さめの段ボール箱に引っ越し会社のロゴマークを作り付けてあげると、〇〇ちゃんの引っ越し荷物(おもちゃ/絵本/宝物)と誇らしげにしていたことも良い思い出です。
変化と緊張からの気疲れ
学校・住まい・暮らしと「新しい」が重なると大人も子どもも気疲れしますよね。転居直後はコロナ禍で学校に隔日しか通えなかったこともあり、何とも未体験な日常が始まり、学校から帰ると少しお茶をしてそのまま倒れこむようによく寝ていました。「クラスの子が下の名前で呼んでくれた」など小さな喜びが増えつつ、浮かない顔で帰宅することも1年目はなかなか多かったです。
学校に行きたくないと休むことも正直ありました。知らない土地で、言葉も友達に合わせてなのか、無意識なのか、気をつかって標準語。充電したらいいよ、と休ませることで登校できる日は割といい顔をしていました。
転勤族のママから転居後〜数カ月は「学校どう?友達はできた?」という聞き方は子どもにとってはプレッシャーになる場合もあると教わり、こちらから尋ねることとしては給食などにとどめ、聞き役に徹することを意識していました。祖父母と電話やオンライン通話で繋ぐなど、子ども自身が話したい事を出せる環境を用意してあげることも必要だと感じます。
見守られている安心感。専門家も頼れる。
転居して1カ月くらいたった頃、学校のスクールカウンセラーが子どもに「調子はどう?」と気軽な感じで声をかけてくれることがあったようで「香川での生活などを詳しく聞いてくれて嬉しかった」と明るい表情が増えてきました。担任の先生にはまだ開けていない扉が開けたんだな、と直感しました。見守ってくれている人が増えた、という実感が安心になったようでクラスの友達との関わりを話す機会も増えてきました。
学校常駐のスクールカウンセラーのほか、いくつかのスクールを掛け持ちする行政のカウンセラー、相談先が分からなかったり先生に関する内容で学校に相談しづらいことが話せるスクールソーシャルワーカー、それとは別に教育相談ができる行政仲介の臨床心理の先生との面談など、気軽に無料相談できる選択肢が増えてきています。
香川に住んでいた時から私はいくらかお世話になってきましたが、香川の子育て支援体制は首都圏にも劣らず充実していたことにも気がつきました。(ちなみに香川県では小児専門のメンタルクリニックは数は限られますが、県外から来院も多い親身な先生で、初診の数カ月待ちには驚きましたが実際にカウンセリングしていただき救われた経験があります。どの先生が合いそうかの選択には、スクールソーシャルワーカーの助言が役立ちました。)
専門的な方ではなくても、習い事の先生や運動クラブの先輩、毎日顔を合わせる交通指導員さん、地域のお年寄り。そうした方すべてが子どもにとっての心理的安全があり、そうした方々との交流が増えるにつれて、少しずつ子どもの心が開いていくのかもしれませんね。
最後に。これから四国へのUIターンをお考えのご家族は、今の大切な繋がりや思い出に加えて四国での出会いを通じプラスされるダブルな幸せで心の豊かさを得られるはずです。転居を通じて、大切な関わり方に気づけたことは、失敗や反省もありますが、私にとっても良い経験となりました。皆さんにとってご参考いただける点が今回のブログに1つでもありましたら幸いです。