UIターン転職でキャリアチェンジするために大切なこと
日頃、四国へのUIターン転職を検討される方とお話をする中で「新しい環境で働きたい」というご相談を受けることがあります。新しい環境というのは漠然と「転職して新しい職場で働くこと」を意味する場合が多いですが、よくよくお話を伺ってみますと「転職によるキャリアチェンジ」を希望されていることもあります。キャリアチェンジとは業界や職種をチェンジすることですが、特にUIターン転職の場合は移住先に現職と同業界・同職種があるとは限りませんので、業界や職種をチェンジを検討する機会は多くなると感じています。今回はそうした「キャリアチェンジ」をする上で大切にしてほしいポイントについてお話ししていきたいと思います。
キャリアチェンジの事例
まずは、業界チェンジや職種チェンジをされた方の具体的な事例をご紹介させていただきます。
①業界チェンジの事例<Aさん:金融業界⇒エネルギー業界>
Aさん(転職当時:33歳)は、証券会社でリテール営業の経験を経て、個人のお客様向けのサービスやキャンペーンの企画、銀行との協働ビジネスの企画、運営に携わられていました。また、様々な事業会社と提携して、個人や法人のお客様向けコンサルティングといった企画業務の経験が豊富な方でした。一方、10年近く同じ業界にいる中で、ある程度一通りの経験を積むことができたという達成感もあり「別業界に挑戦することで自分自身の力を磨いていきたい、初心に返ってスキルアップを図っていきたい」という気持ちも持たれていました。四国へUターンするにあたり、同じ金融業界であれば先々でも改めてチャレンジできると考えられ、金融以外の業界へ転職することを決意されました。この時、転職先として選んだエネルギー業界では、グループ企業や様々な企業と連携して新規事業を企画・推進する部門にご縁があり、これまでの「企画力」や「協働ビジネスの経験」を活かしてキャリアチェンジすることに成功しました。現在は、外部事業者との提携によるコスト削減や販路拡大、財務改善など、お客様にソリューションを提供する企画の導入を進められています。
②職種チェンジの事例<Bさん:生産準備⇒海外営業>
Bさん(転職当時:28歳)は、海外留学の経験もあり語学が堪能な方です。前職では自動車部品メーカーの生産準備部門で、語学力を発揮して主に海外拠点生産ラインの立ち上げ準備や生産計画に携わられていました。大手自動車メーカーとの関係も強く、量産準備に伴って各海外拠点の部品や品質、コストなど様々なビッグデータを扱うことから業務改善の意識や行動が刷り込まれていたBさんは、Excel VBAやMicrosoft Projectを独学で学び積極的に工数削減に貢献されていました。ご結婚に伴い四国にIターンを決意したものの、同じ生産準備の求人はなく転職活動に苦労されていましたが、語学力やデータ分析力、業務改善のご経験を活かして、船舶関連業界のアフターサービス部門に国内外の営業職として転職されました。アフターサービス部門は顧客や船舶に関する膨大なデータを扱う組織で、営業スキルは豊富な方が多い一方、データ分析や管理のスキルを持つ方は少なく、これまでアナログな手法に頼っていました。Bさんが入社をされ、業務改善提案を行い、営業で発生するルーチンワークの時間の削減に貢献。データに強い営業職として活躍されています。
キャリアチェンジをする時に大切なこと
この2つの事例をもとに、キャリアチェンジをする時に大切なポイントをお伝えしていきます。
ポータブルスキルを把握する
キャリアチェンジを成功された方々は、たとえ業種や職種が変わっても「持ち運び可能なスキル」を意味する「ポータブルスキル」を持っているという点が共通しています。ポータブルスキルとは、厚生労働省が提唱した、「職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」のことで、語学力、調整力、課題解決力、傾聴力、協調力、マネジメント力などがあげられます。
例えば、業界をチェンジされたAさんのポータブルスキルは「営業力」や協働ビジネスなどの「企画力」「コンサルティング力」「課題解決力」などがあげられます。Bさんのポータブルスキルは「語学力」「データ分析・活用力」「課題解決力」「業務改善のスキル」などです。
以前、私もポータブルスキルについて講習を受ける機会があり、自身のポータブルスキルを整理したことがありました。講習で紹介されていた『ポータブルスキルセルフチェックツール(一般社団法人 人材サービス産業協議会)』は、質問に答えていくことで簡単に自分のポータブルスキルを確認できる無料ツールとなっています。
他にも厚生労働省を始め様々な機関で独自の診断ツールを公開されていますので、ぜひ一度ご自身のポータブルスキルをチェックしてみてください。
なお、自身のポータブルスキルを把握した上で「今は足りていないが、今後身につけたいと感じているスキル」については、積極的に身につけるトレーニングをされるのも良いと思います。先日、マネジメント力を身につけたいとお話してくださった方は、まずはプロジェクト単位でリーダーを経験しながら、徐々に小規模なグループから大きな組織へとマネジメント対象を広げる努力をされていました。
キャリアチェンジした場合の年収の相場観を知る
一般的には年齢が若い方がキャリアチェンジできる可能性が高く、年を重ねるにつれてキャリアチェンジのハードルは高くなっていきます。30代以上の転職者に対してはスキルや経験など、即戦力になる人材かどうかを重視しているケースが多く、20代に比べて採用の基準が高くなります。
また、30代以上の方は現職ではそれまで積み上げてきたキャリアがあるため、20代の時よりも年収が上がっていることがほとんどだと思いますが、その状態からキャリアチェンジで未経験の業界や職種にチャレンジする場合、年収が大幅に下がる可能性があります。キャリアチェンジで出来る限り年収の維持を希望されるのであれば、やはりポータブルスキルをどれだけ持っているか、が鍵になります。
例えば、Aさんの場合は「Uターンして業界をチェンジする場合、どの程度の年収になるか」という相場観をしっかりと理解された上で、自分自身のキャリアの棚卸しを行い、ポータブルスキルが明確に整理されていました。また、業界チェンジ後は年収が下がるものの、年収以外の福利厚生やその後の年収推移なども把握され、転職後の生活のイメージも持たれていました。そうした事前の準備により、年収にこだわり過ぎず「自身の経験が転職先にどのように貢献できるか?」をしっかりイメージしてアピールできたことで企業側にもAさんの魅力が伝わり、年収は前職より下がったものの、当初想定していた以上の提示で転職を実現されました。
もちろん、年収アップが叶うケースもあります。Bさんの場合は20代でのキャリアチェンジであったこともあり年収をアップすることができました。営業経験がない中でも年収アップできたのは、ポータブルスキルとして「語学力」や「コミュニケーション力」をお持ちであり、それを選考の中でしっかりアピールできたことがポイントとなりました。前職での交渉や調整力が活かせると企業側に評価いただき、キャリアチェンジをした上で年収のアップも叶えることができました。
転職活動における面接対策
転職活動をするなかで「結果的にキャリアチェンジになった」というケースもありますが、最初からキャリアチェンジを希望している場合は、その理由を明確に回答できるようにしておくことが重要です。なぜ未経験から異なる業界や職種にチャレンジするのか、明確に回答できるように準備しておきましょう。キャリアチェンジをすることで、目指すキャリアビジョンはどのようなものなのか、しっかりイメージしておくことが重要です。
Aさんの場合は、上記でもお知らせしましたように「別業界に挑戦することで自身の視野を広げてスキルアップを目指す」ことを明確に企業に伝えられました。また、配属先の事業をしっかり研究されており「これまでの経験を未経験の事業でどのように活かしていくのか」「将来目指したいキャリア」をイメージして面接に臨まれました。
Bさんの場合は、大手メーカーでの生産準備に特化したご経験でしたので、地方へのIターンにおいて同じ職種の求人はなかなかなく、必然的に職種チェンジすることが必要でした。語学力を活かしたいという思いがあり、グローバル展開しているメーカーの中からご自身の経験を活かせる求人を見つけ出し、転職理由や志望動機をしっかりと整理。面接ではキャリアチェンジしても、これまでの生産準備で得た経験やスキルを十分に活かしていけることをアピールされていました。
さいごに
今回は「キャリアチェンジ」をするために大切なことについてお伝えしてきました。なかでも特に、「ポータブルスキルを整理して活動することが重要」というお話をさせていただきましたが、自身のポータブルスキルを明確に言語化できる方はあまり多くないのではないでしょうか。自身のポータブルスキルを整理したい、という方はぜひご相談ください。これまでのご経験をお聞かせいただきながら、みなさんの強みや魅力を一緒に探っていきたいと考えています。このブログが、UIターン転職を検討されている方の参考になりましたら幸いです。