BLOG

労働条件が重視されがちな転職活動

こんにちは。四国の転職エージェント、リージェントの加地です。

先日の2024年春闘において大手企業の労働組合からの要求に対し、満額回答が相次いだニュースをご覧になった方も多いかと思いますが、近年、給与面に限らず、労働時間や休日、そして有給休暇等々、働き方改革(労働条件の改善)が注目されてるようになっています。

しかしそんな現代だからこそ、皆さんに気をつけておいていただきたい観点を、今回のブログでお伝えしたいと思います。

労働条件の改善が進む日本企業

厚生労働省の調査によれば
・完全週休2日制の企業は50%以上
・平均年間休日数は110日以上
・年次有給休暇の平均取得率は60%以上
などとなっており、数年前から比べると、かなり労働条件の改善が進んでいます。

先述のベースアップもそうですが、労働条件の改善は多くの方々にとって明るい話題として捉えられているかと思います。こうした流れは中小企業にも波及し、ますます進んでいくものと感じています。

実際に私たちが活動している四国エリアにも広がりつつあり、地元企業から「他社の動向を知りたい」「当社でも条件改善を進めていきたい」などの相談が増えています。

このような状況もあってか、転職を考える人々は増加しており、2023年の調査によると約1,000万人もの方々が転職を考えていると言われています。転職をするのはチャンスの時期だと捉えている方も増えているのではないでしょうか。

労働条件の改善が注目されている今だからこそ、お伝えしておきたいこと

今に始まった話ではありませんが、もともと「高い給与を求めたい」「休日を増やしたい」「残業を減らしたい」と考えている方は多いと思います。実際に私たちが面談をさせていただく転職希望者の方からもよく聞かれる声です。

ただし、労働条件に過度に焦点を当てることは注意が必要であることを、ここではお伝えをしておきたいと思います。

労働条件を重視すること自体は否定しませんが、私たちは今までに、労働条件を最重視して転職した方々が転職先でうまく定着して活躍することができず、再び転職活動を余儀なくされたケースを数多く見てきました。



せっかく転職をして、労働条件が良くなった(改善した)にも関わらず、なぜそのような状況が発生してしまうのでしょうか。

ハーズバーグの動機づけ・衛生理論において、労働条件は満たされないと不満足を大きくする要因と言われていますが、反対に満たされたとしてもモチベーションを向上させることはできないとされています。

一方で「達成感や貢献感」「権限移譲(任される)」「成長実感」「仕事そのものに対するやりがい」といった動機づけ要因は、満たされるとモチベーションを高めると言われています。

転職後、新しい職場で苦労されている方の多くは、この動機づけ要因(自身の指向や価値観)に着目できていなかった可能性が高いと考えられます。

転職は目的ではなく手段として考える

私は「転職は目的ではなく手段であり、自身の課題を解決するための選択肢の一つである」という考え方を、転職相談に訪れる方々にお話させていただいています。転職は、現在の職場で解決できない課題に直面した際に、その課題解決や目標達成の手段となり得るものであり、叶えたい目的を実現するための第一歩であると考えています。

もちろん、労働条件を満たす方が優先順位が高いこともあると思います。ただし、転職したい理由が本当に労働条件だけなのかどうか、改めて考えてみていただきたいと思うのです。

労働条件は数字で見えるため比較的わかりやすいですが、「やりがい」や「働きがい」といった要素は感情的な側面が強く自己認識や言語化は難しい場合がありますので、より自分自身と向き合っていただくことが大切になってきます。

近年、「カルチャーフィット」という視点が転職において重視される傾向にあります。この視点は、個々人の指向や価値観と企業が持つ指向や価値観が一致するかどうかを指し示すものです。個々人が持つ性格的な特徴と同様に、企業も独自の性格的な特徴を有しています。

従って、働く環境が自身の性格や価値観に合致するかどうかは、個人の感情に影響される重要な要素ですので、いかに労働条件が魅力的だったとしても、自身の性格や価値観に合わない職場環境では満足度が低下してしまう可能性があります。

転職を検討する際には、労働条件だけでなく、自身の気持ちや目的にしっかり向き合うことが重要です。自分がなぜ転職を考えるのか、何を求めているのかを明確にすることで、より適切な選択ができるのではないでしょうか。労働条件だけでなく、是非、自分の心の声に耳を傾けてみていただければと思います。


筆者プロフィール

国家資格キャリアコンサルタント

加地 盛泰Kaji Moriyasu

愛媛県四国中央市出身。専修大学法学部を卒業後、大手旅行会社の勤務を経て、東京から四国へU ターン。株式会社中四国リクルート企画(リクルート100%出資)に入社し、以来、「新卒採用」「中途採用」「社員教育」「人事制度構築」などHRM 領域全般に携わる。株式会社リクルートに転籍後は、HRカンパニー地域活性営業部、中四国グループ、四国グループのゼネラルマネジャーを歴任し、2011年に同社を退職。2012年、株式会社リージェントを設立。現在は、候補者向けの転職コンサルティング、企業向けの採用コンサルティングや人材育成トレーニング活動などに携わっている。