四国地域のテレワーク普及率と、在宅勤務を経験して感じたこと
政府の働き方改革の一環として推進されてきたテレワーク(リモートワーク)。新型コロナウイルスの流行前はほとんど普及していませんでしたが、感染拡大後、感染リスクを抑えるために少しずつ導入が進んでいるように思います。「社員の通勤時間が短縮できて、ストレス軽減に繋がっている」「無駄な会議が減って、業務が捗る」など、テレワークを前向きに捉える企業も少なくないようです。
しかし、それは都市部を中心とした話。地方に目を向けて見ると、まだまだテレワークを実施している企業が少ないのが実状です。
四国地域(香川・愛媛・徳島・高知)のテレワーク普及率
2020年6月に内閣府がテレワーク実施状況に関する調査をしたところ、「東京圏:48.9%」「地方圏:26.0%」と、東京圏に比べて地方でテレワークが普及していない現状が明らかになりました(※1)。
また、パーソル総合研究所が2020年12月に発表したテレワーク普及率に関する調査結果によると、四国地域のテレワーク普及率は全国平均の24.7%を大きく下回り、4県全て10%以下。特に香川県に至っては5%以下と、47都道府県の中でワースト3の普及率になっています(※2)。
・高知:「8.8%」(33位)
・愛媛:「8.2%」(36位)
・徳島:「6.8%」(40位)
・香川:「4.4%」(45位)
普及率上位の「東京:45.8%」「神奈川:34.9%」などに比べると、導入は全く進んでおらず、都市部と地方の差が浮き彫りになっています。
また、企業規模(従業員数)別にみると、企業規模が大きいほどテレワーク普及率は高く、規模が小さくなればなるほど普及率は低くなっています。
・1万人以上:「45.0%」
・1000~1万人未満:「34.2%」
・100~1000人未満:「22.5%」
・100人未満:「13.1%」
テレワークをしていない理由で特に多かったのは「テレワークで行える業務ではない」が45%、次いで「テレワーク制度が未整備」が37%。従業員100人未満の企業では「テレワーク制度が未整備」の回答が最多であり、小規模な企業ほど制度上の課題があることが見て取れます。
※1:内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」2020年6⽉
※2:パーソル総合研究所 「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」2020年12月
地方でテレワークが普及しない要因
テレワークが普及しない理由には大きく5つの課題があると言われています。
①紙中心、ハンコ中心の企業文化
②インターネット環境・セキュリティ面の問題
③従業員の業務管理や評価が困難
④コミュニ―ションが取りづらくなる
⑤テレワークに適していない業務の存在
地方企業にとっては、特に①・②の課題が足枷になっている可能性があります。デジタル化が進んでおらず、例えば「毎日、紙で日報を提出する必要がある」「角印の使用履歴は紙で管理する」など、手書き文化が色濃く残っている企業や、「在宅勤務の通信環境を整備できる人材がいない」「複数人で1台のパソコンを利用している」など、インターネット・セキュリティ面に課題がある企業は依然として多いように思われます。
また、「車通勤する社員が多い」という地方ならではの要因も考えられます。電車通勤であれば、長時間にわたり不特定多数の通勤者と接触しますが、車通勤であれば家から会社まで誰とも会わずに移動することができます。毎日の通勤に対するリスクが少ない点も、テレワークが普及しない理由になっているかも知れません。
地方企業がテレワークを推進していくためには、これらの課題を一つ一つ解決していく必要があります。「業務を正当に評価できなくなる」「一部の社員にテレワークを認めると、社内の軋轢を生む」など、テレワークの導入に不安や抵抗を感じ、そもそもテレワークの導入に前向きではない、という意見もあるかと思いますが、事業の拡大に向けて多様な人材を確保していくためにも、フレキシブルな働き方を認めていくことはとても重要だと思われます。
リージェントの取り組み
新型コロナウイルスの影響によって、私達リージェントの働き方も大きく変わりました。もともとテレワークは実施しており、感染が拡がる前から在宅で勤務する社員はいましたが、2020年4月の緊急事態宣言を受けて、テレワークの活用が一気に進んでいます。
●<2020年3月>:WEB会議システムの拡充
クライアント企業や転職希望者との打ち合わせを対面からオンラインに切り替えるために、WEB会議システム(WhereBy・Skype・Google Meet・Zoom)を拡充し、利用する際のマニュアルを作成。
●<2020年4月>:テレワークを基本とした勤務体制へ移行
2020年4月7日、都市圏に発令された緊急事態宣言を受けて、翌4月8日にテレワークに対する社員の意向確認、その翌日の4月9日に「テレワークを基本とした勤務形態に移行する方針」を広報。四国に緊急事態宣言が出される4月16日を前に、いち早くテレワーク体制へ移行。
●<2020年4月>:リモートアクセス環境の整備
社外からのリモートアクセスのシステムを整え、社員全員が安全に共有サーバーを利用できる環境を整備。
●<2020年10月>:在宅手当支給開始
通信費、光熱費の負担軽減を目的に在宅手当の支給を開始。就業規則を改定。
●<2021年1月>:全体会議の際に雑談タイムを導入
在宅での勤務が増えたことによる「コミュニケーション不足」が課題となったことを受けて、毎週実施している全体会議にて30分間の雑談タイムを導入。社員を3~4名ごとに分け、困っていること、家族のことなど、何でも気軽に話せる時間を設定。
このように状況に応じて制度やルールを変更してきたことで、今では多くの社員が在宅勤務をベースとした働き方を取り入れています。
在宅勤務を推進することで「勤務時間が短縮できる(交通費の請求及び処理業務も削減)」「業務に集中できる」など、様々なメリットがあり、何より「コロナの感染リスクが下がる」ことは、とてもありがたい変化だったように思います。
一方で、オンラインだと気軽に声をかけられない、他のメンバーの雰囲気が掴みにくい、といった「コミュニケーション不足」の課題もあり、今後もシステムや制度の改良を続けて行く必要があります。
在宅勤務を1年続けて感じた「価値観」の変化
2020年4月の緊急事態宣言から間もなく1年が経とうとしていますが、「働き方」「働くことへの価値観」がコロナ禍によって大きく変化しているように感じます。多くの方が社会的距離を保ってテレワークを経験したことが、これからの働き方やライフスタイルに多大な影響を与えていくことは間違いありません。
テレワークには良い面も悪い面もあり、一概に在宅勤務を推奨する必要はありませんが、働き方の選択肢として制度を整えることは必要です。「転居が必要で、オフィスから遠くなる」「子どもの面倒を見る必要がある」など、テレワークが活きる場面は今後さらに増え、その価値がより一層高まっていくように思われます。
場所を選ばない働き方が広がっていく中、企業を選ぶ基準も多様化しており、「テレワークを前向きに取り入れているのか」そんな観点も企業風土を反映する1つの要素になりそうです。企業情報を入手する際には、そのような情報も積極的に収集しつつ、私たち自身が自社で働き方の改革を進め、経験値を溜めることで、テレワーク導入を進めたいという四国本社企業の相談にのれるような存在にもなっていきたいと考えています。